大規模高齢者コホート研究:柏スタディ

私たちは、千葉県柏市在住高齢者(自立/要支援)約2,000名を対象とした大規模高齢者コホート調査(柏スタディ)を実施し、健康状態、身体の構造と機能、活動、社会参加、心理及び認知機能等の精緻なデータ収集及び解析を行っています。平成24年度から、第4次調査まで実施されました。これまで、フレイルやフレイルの最大の原因であるサルコペニアの新たな簡易評価法、フレイルやサルコペニアの発症機序、フレイルやサルコペニアの多面的影響等についての研究結果を国内外に発信しています。

私たちは、研究のための研究は行いません。研究成果を地域へ還元し、フレイル予防を通した健康長寿のまちづくりを目指します。

柏スタディからの知見

サルコペニア診療ガイドライン2017年版も推奨「指輪っかテスト」

サルコペニアは早期発見が重要です。サルコペニアのリスクを高齢者自身が簡単にチェックできる方法として、「指輪っかテスト」を開発し、その妥当性を検証しました。

柏スタディ参加者1,904人を調べてみたところ、指輪っかテストで「囲めないほどふくらはぎが太い」人と比べると、「ちょうど囲めるくらいの太さ」の人は、サルコペニアである可能性が2.4倍高く、「すき間ができるほど細い」人は6.6倍高いことがわかりました。

さらに、調査開始時にサルコペニアでなかった高齢者の経過を4年間追跡してみると、「すき間ができるほど細い」人はサルコペニアを3.4倍発症しやすく、要介護認定リスクが2.0倍、そして死亡リスクも3.2倍高いことがわかりました。

指輪っかテストは、サルコペニア診療ガイドライン2017年版でも推奨され、フレイルチェックにも導入されています。

【文献】

Tanaka T, Takahashi K, Akishita M, Tsuji T, Iijima K. “Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults. Geriatr Gerontol Int. 2017.

 

臨床や介護予防の現場で使えるサルコペニアの代替指標

サルコペニアの診断には高額機器や適度なスペースが必要です。臨床や介護予防の現場でサルコペニアを簡易に判定するため、サルコペニアの代替指標について検証しました。

柏スタディに参加した高齢者1,971人を調べてみたところ、サルコペニアは3項目「暦年齢」、「握力」、「ふくらはぎ周囲長」を用いて判定することが可能だとわかりました。この結果から、3項目によるサルコペニアの危険度スコア表を開発しました。

開発したスコア表を導入することで、臨床や介護予防の現場でサルコペニアを簡単に評価することが可能になりました。

【文献】

Ishii S, Tanaka T, Shibasaki K, et al. Development of a simple screening test for sarcopenia in older adults. Geriatr Gerontol Int. 2014;14 Suppl 1:93-101.

 

家族と同居しているのに孤食の人は抑うつ傾向が高い

独居などの社会的環境が高齢者の心身の健康を損なうリスクが報告されています。高齢者の孤食(独りで食事をとること)が抑うつ傾向の高さと関係するかを検証しました。

柏スタディに参加した1,856人を調べてみたところ、同居家族がいるにも関わらず孤食な人は抑うつ傾向が高いリスクが前期高齢者で5.0倍、後期高齢者では2.4倍でした。

家族・友人をまきこんだ共食の推奨や、地域で会食の機会を提供することが、心の健康を保つことにも繋がるかもしれません。また、独居の人だけではなく、家族と同居している人にもしっかりと目を向けることが重要です。

【文献】

Kuroda A, Tanaka T, Hirano H, et al. Eating Alone as Social Disengagement is Strongly Associated With Depressive Symptoms in Japanese Community-Dwelling Older Adults. J Am Med Dir Assoc. 2015;16(7):578-585.

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